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           アミグダリン

 

 梅干しの商いをはじめてから30年余りになります。

和歌山県にあるみなべ川村には梅干し屋さんの老舗がたくさんあって、経営者の方に

最初いろいろご指導を仰ぎました。

 その時点で、うす塩の梅干が誕生したのはここ10年の事とおっしゃっていましたので

今から40年余り前と言う事になります。それまで梅干しが苦手だった人たちもマイルドな味に会い梅干しのイメージが変わって、梅の商売はいっきに10倍くらい売り上げが上がったそうです。

 梅干し嫌いの人々も召し上がっていただけるようになったことは、たいへんな功績だと思います。

うす塩梅の場合は、塩漬けして干し上げた梅干しを水洗いして塩抜きをした後その店の味のだしに再び漬けて仕上げるのが普通の作り方です。

現状では大方のお客様がうす塩梅干しを選ばれます。

昔風の塩だけで漬けたものを好まれるのは本当の梅干し好きの方です。

うす塩梅のちょっと残念なところは先程の製法の途中で、梅に含まれるクエン酸を代表とする有機酸が外へ流出して少なくなることです。

有機酸を留めたままお客様に満足頂ける味を実現する製造方法を研究していかなくてはならないと思っています。

うす塩梅の場合は時が経つとすっぱい元の味に戻って行きますので、賞味期限は6か月にしています。

塩だけで漬けた白干梅は塩が保存剤となってもっと長く持ちますが、漬ける時の塩の量が多すぎると2年目でも塩が結晶になって梅肉の中へ入り込みうまくいきません。

まさに「塩梅 (あんばい)」が良くないと駄目な例ですね。

上手く漬けられた梅干しでも3年物が最高の食べ時といわれています。3年以上経つと

からだに良い成分が自然と外へ出てしまうので、それ以上は放置しないでお召し上がりくださいませ。

 

 ところで青梅には毒があるので、青梅を食べるとお腹が痛くなるというのをご存知の方も多いと思います。それは青梅の時には「エムルシン」という酵素があって

そのはたらきによって「青酸」という毒が独立して存在するからです。

梅の実が熟すると酵素エムルシンのはたらきが無くなり(エムルシンは40度C以上の

加熱でも効力は無くなります)青酸は実の中に在る「糖」と結びついて

「シアン配糖体」となりこれは「アミグダリン」と呼ばれます。

 

 アミグダリンは梅の実の他にもあんず・びわ・桃などバラ科の植物の果実にも含まれます。メキシコやアメリカの一部ではアミグダリンを制ガン剤として用いている病院もあるようです。

単独では青酸という「毒」であるものが糖と結びついて「薬」に変わるとは!

梅の実は神秘的だと思われませんか。

あなたの食卓にもぜひ梅干しを常備してくださいね。